必須のトレーニング
各i-Digitsユーザーが、自身の可能性を満たし、自身の義肢の機能的成果を最高に発揮できるようにするよう支援、指導することは重要です。
各ユーザーは固有であり、身体の状況や機能的な必要性によって、i-Digitsのどの特徴や機能を最もユーザーに適用できるかを指示することができます。
トレーニングは理想的には個人中心であり、作業療法士と義肢装具士がユーザーと協力して、個人の目標、ライフスタイル、興味に注目します。
i-Digitsデバイスの使用についてのトレーニングは、段階を踏んだアプローチをとるべきです。
全てのユーザーにとって、i-Digitsの必須トレーニングについて理解することが出発点です。これには、開閉コントロールの展開や、義肢が届く対象物の正しい配置、グリップで適切な強度を加えることなどが含まれます。
残存手指がある場合には、その手指の動作と義肢の手指の協調を学ぶことも、必要なスキルです。
i-Digitsのコア機能
しっかりと対象物を持ち上げるためには、ユーザーは、i-Digits義肢を対象物の周囲に配置し、適切なグリップ力を加える必要があります。
適合グリップにより、手指は、握った対象物の形状に沿います。手指は、対象物の抵抗に合うと、自動的に停止し、過度の力をかけなくとも自然な形状と安定したグリップを提供します。
このコンセプトのトレーニングには、以下を含みます:
様々なサイズ/形状の対象物を使用し、把持し、解放する練習。
複数の手指を対象物の下/周囲に沿わせる。
- ユーザーの正面に対象物を置き、テーブルに座った状態から開始します。まず、コーン、カップ、ボールのような比較的大きな対象物を使って、簡単に一方的に把持と解放をする練習をします。
- i-Digitsを、対象物の方向に持っていくことに集中し、肘、肩、体幹などの代償運動を避けるようにします。ユーザーは、特定の対象物を効率的に、代償を起こさずに把持するために、手継手や母指の位置調整が必要な場合があります。
- 横から、上からなど、違う角度から対象物にアプローチする練習をします。
- 対象物を体幹から離した状態で練習します。キャビネットの上や床の上にあるものなど、異なる高さや空間上の位置でも、予期せぬシグナルを出さないようにします。
- ユーザーのテクニックを向上させるため、小さな対象物を導入します。
重い対象物を運ぶなどの活動を練習する際には、i-Digits義肢のどこに重量がかかっているかに注意します。対象物の重量は、手指の基部とハンドの手掌の間にかかる必要があります。重い対象物を持ち上げるときには、筋を弛緩させることに留意します。
自動把持機能により、対象物を把持している際に、急速な/誤った「開く」シグナルが出された場合には、手指は再び閉じます。これは、Biosimアプリの全体の設定で、on/off することができます。
初期のトレーニング中に筋電シグナルをモニターすることで、どのような場合に不意のシグナルが発生するかを知ることは、役に立ちます。そうすることで、対象物を把持する際に筋を完全に弛緩させるよう、指示することができます。
開閉動作は、日常生活の様々な活動で必要とされます。ユーザーにとって、正しい把持と解放についてしっかりと理解すること、筋による一定で、予測可能なコントロールができることは、重要です。
母指は、外側から反対方向へ、手動で回旋させることができます。
様々な対象物の形状に合わせて、母指の位置を試してみましょう。
また、ユーザー自身の母指が残存している場合には、グリップするためにi-Digitsの手指に対して母指を適切に配置すべきです。
各対象物を持ち上げる際にどのような母指の位置かを知るためには、適切なトレーニングドリルが必要です。様々な母指の位置を必要とする対象物の例を以下にあげます。
- 外側―トランプやプレートのような、平たい対象物。
- 円筒形―歯ブラシやホウキのような柄の付いた対象物。
- 掌底 - カップやボトルのような、全体での把持を必要とする、大きな対象物。
- ピンチ / 三指つまみ - おもちゃの組み立てブロック、スイーツのような高精度を必要とする、小さな対象物。
ピンチグリップでは、母指は示指と対立すうよう配置する必要があります。
三指つまみでは、母指は、示指と中指の間に対立するよう配置する必要があります。
必要なタスクに合わせた正しい母指の位置は、日常生活の活動の多くに渡って適用することができます。
トレーニングの初期段階で母指の回旋に慣れることは、役に立つ技能が確立されます。
比例コントロールとは、手指の動作速度です。ユーザーが緩やかな開閉シグナルを出した場合、手指はゆっくりと動きます。一方、強いシグナルを出した場合には、手指はより早く動作します。
手指の速度をコントロールできるため、適切なタイミングで精度の高いタスクを行うことができます。
さらに、BiosimとMy i-Limbアプリ内で速度ブーストを設定して、i-Digitsの速度のベースを設定することができます。
強く、しっかりとしたグリップが必要な場合には、ユーザーは、対象物に対して手指が閉じた後にもシグナルを出し続けることができます。長い「閉じる」シグナルを送ることで、Vari-Gripにより各手指に順番に追加のグリップ力が適用されます。その後、ユーザーが弛緩しても、「開く」シグナルは発されるまでは、グリップ力は維持されます。
注: Vari-Gripは、i-Digits Quantumのみの提供です。
Vari-Gripは、機能の停止や開始の遅延について、Biosimアプリで調整することができます。
速度ブーストは、BiosimとMy i-Limbアプリで調整することができます。
比例コントロールは、初期段階でトレーニングすべきものです。
ユーザーは、義肢適合前の筋電トレーニング中にも、このコントロールについて学ぶことができます。筋電グラフやバーチャルハンドにより、視覚的フィードバックを得ることにより、緩やかなシグナルと強いシグナルについて、練習しておくことができます。筋テストやトレーニングについてのより詳細な情報については、リソースセクションの「筋テスト」をご参照ください。
比例コントロールのトレーニング
義肢を適合した状態での、ゆっくりとした、緩やかな動作のトレーニングは、つぶれるような柔らかい対象物を使用して行うことができます。ユーザーは、対象物をつぶしたり、壊したりしないようにします。
練習に適した対象物は、ストレスボール、プラスチックや紙製のコップです。
空間内で対象物を動かしながら (高く、低く、前方にのばす)、動作中に不意に対象物をつぶさないよう、練習しましょう。
Vari-Gripのトレーニング
ユーザーは、最初にi-Digits義肢で、自身の反対側の前腕を把持することで、Vari-Gripによる追加の把持力を感じることができます。グリップ力を追加すると、各手指で順番に増加していくのがわかります。また、ユーザーは各手指が締まる音を聞くことができます。
繰り返し練習に使える対象物は以下を含みます。しっかりと合わせて積み上げられたコーンの取り外し、およびボトル、ジャー、パックの開封。対象物が滑ったり、回ったりしないよう、十分な力が加わっていることを確認します。
日常生活で、ゆっくりとした、緩やかな動作と強い、しっかりとしたグリップ力を使い分けることは、非常に役立ちます。
ゆっくりとした緩やかなグリップ力は、食事の準備や、誰かの手を握る、握手するなど、柔らかい対象物を壊さずに扱うのに役立ちます。
Vari-Gripによる追加の把持力が有効な活動には以下が含まれます。
- パックやコンテナを開ける
- 靴ひもを結ぶ
- ドレッシング
個々の手指は、残りの指を閉じる (または開く) 動作中に、1本あるいは複数の手指に抵抗を加えることでストールの状態にすることができます。
これは、特定の活動のために指の特定の位置を選んだり、対象物を保持するために指の位置を事前に決めておくのに便利です。
- 動作を止めるための適度な抵抗を加える練習。
- 最初は、示指を開いた状態でストールする練習をします。これはタイピング、ボタンを押す、指さす場合などに役に立つ配置です。
他の手指のストールの実践的な利用には以下があります。
- 示指、中指、環指と小指をストールし、シャツ、スリーブやジャケットを着脱する配置を実現する。
- ラテラルグリップのために母指をストールする。
日常生活の活動中に手指をストールすることは、i-Digits義肢を配置してタスクを完了するための手早く、簡単な方法です。
ADLの追加例
基礎を作ることができたら、ユーザーは、日常生活での練習に移り、少しずつ複雑性を増していきます。特定のタスクにどのようにアプローチするかについての、いくつかの追加のアイデアについては、Ossur Academy YouTube videos動画でご覧になれます。